2010/12/18
うるしかぶれ?
当店の「漆器まつり」も明日19日(日)までとなりました。ブログでの商品紹介が追いつかないもので店頭にはすでにない商品も含まれますが、ご参考までに。本日ご紹介する商品は、日常のための漆器とは異なり工芸的な見て楽しむ美しさもあるものです。逆に言うと漆器といえばこのような技術を駆使したものを思い浮かべる人のほうが多いかもしれません。ですがこうした優れた作品は、日常の漆器のためのしっかりした土台の技術の上に成り立っているのだということを心に留めておきたいものです。

真塗(しんぬり)内朱の「八十椀(はちじゅうわん)」セットで8000円。
お茶事やお寺のお斎などでも使う椀4つのセットです。つぼ(小ぶりの吸物椀)ひら(煮物椀)しる(汁椀)めし(飯椀)の四つのそれぞれ蓋が付いていて重ねると八重になることから八十椀と呼ばれます。真塗というのは、黒呂色漆で上塗りしたものです。つや消しの様に鈍い輝きの漆椀と違い、最後に漆を磨き上げて艶をつける塗り方の技法です。見た目重視ということですね。

椀の内側(見込み)は鮮やかな朱漆で塗られています。一目見るだけで上質な塗りだとわかる深みのある椀です。

それぞれ大きさの違う4つの椀、これだけあれば毎日の食事に事足りますね。

菊竹蒔絵の進物盆、3枚組12000円。

3枚ともに若干異なる図柄の菊と竹が蒔絵で描かれています。

菊の葉の葉脈まで美しい高蒔絵。

布着せ本堅地の輪島塗角盆2000円。

縁の立ち上がり部分は、摺漆(すりうるし)塗りで木目の美しさを存分に。

輪島塗の鯉が高蒔絵で描かれた椀、5客セット。

金色の鯉が美しいです。

布着せ本堅地の輪島塗富士形吸い物椀、5客セット。

先にも申しましたが、漆器は角が弱いのですが、名月椀や富士形の椀のようにあえて角をつけたものもあります。下地の手間暇を考えると何倍にもなりますが、技量試しのようなものでしょうか?それもわかる人に使ってもらわねば何もなりませんね。表面には蓋と椀に通しでススキの平蒔絵。

蓋の内側には、見事な高蒔絵で緻密な菊。

椀の内側には、はらはらと菊の葉っぱ。しかもよく見れば虫食いの様子までありありと。

溜塗(ためぬり)の内箔菓子器20000円。

菓子器ですが、要はただの箱ですのでいろいろな用途にも。溜塗というのは赤い色の下塗りのうえに透漆を塗って、飴色の漆の透明感を楽しむ塗り方のことです。

いやらしさのない上品な箔。

布着せ本堅地の輪島塗2段重箱、12000円。

沈金で菊と蝶が描かれています。優美で大胆な意匠は琳派のかおり。

内側は朱。下地もきちんとした良い作りです。

布着せ本堅地の輪島塗の重箱台。

根来塗りとは逆に中塗りに朱、上塗りに黒がかかっているようです。何となく鬼のパンツの柄を思い出すのは私だけでしょうか…

重箱をのせるとこうなります。ちなみにうちのニャンコは重箱台の上に杯洗の食器でおまんまを食べます。猫が前かがみにならなくてよいので画期的だと思っているんですが、知らずにうちに来たひとは新興宗教の神様へのお供えだと勘違いする人がほとんどです。

一見無地の黒い椀。京塗黒吸い物椀全10客、すべてバラ売りで1客15000円。

蓋を開けると、蓋と椀の内側にそれぞれ異なった意匠が蒔絵で表現されています。全部で10客ありますが、その蓋と椀すべてがちがう柄です。贅沢の極み。

これらは何を描いてあるのかと言いますと、「謡本(うたいぼん)」です。謡(うたい)というのは能の声楽の部分です。能では台詞の部分にも独特の抑揚がありますが、それらのテキストといえるものです。能の知識があることが前提の楽しみ、大人への道は遠いです…

わたしのような素人目にも技術の確かさはわかります。

こんなに小さな謡本の文字までがきちんと美しい字で描かれています。
独特のツヤが美しい呂色仕上げのこれらの椀は京塗(きょうぬり)です。漆下地の調合などにおいて輪島塗などとは異なり、実用というよりも魅せるための漆器です。全20柄ですから、ここでは全部ご紹介しきれませんのでどうぞ店頭でお手にとってご覧くださいませ。
以上、今回の「漆器まつり」の商品をご紹介してまいりました。「漆器」とひとくくりにはできないほどピンからキリまである漆器の世界は深く楽しいです。漆による皮膚炎を「うるしかぶれ」と言いますが、気触れる(かぶれる)というのは「感化される」とか「その風に染まる」、といった意味もありますので今まで漆器に興味がなかったという方もホンモノの漆器の良さを体感してどんどん漆器に気触れて欲しいものだと思います。師走も後半を迎え何かとお忙しい折とは存じますが、今回ご紹介しきれていない花塗の時代椀や大ぶりな菊の蒔絵の3つ椀なども追加で入荷しておりますので店頭まで足をお運びいただけましたら幸甚です。