2010/11/29
正しい古道具の値切り方
先日、いつも骨董市に出店している同業者との話で思うことがありましたのでひとつ。その同業者の方は、次回から骨董市への出店をとりやめるというので、なぜか聞きましたら商品の値切り方があんまりな方が多くなってきたので、わずかな収入を得るのに割に合わないということでした。客 「これって安くなりますか??」
業者 「(値札には3000円の商品)それじゃもう1000円でいいですよ」
客 「え?、100円になりませんか??」
わかりやすく言うと、こういったことです。骨董市は学校のバザーなどと違って、仕事として商品を集めて売りに来ているわけですから、業者の提示する値段を無視した値切り方は、はっきり言って失礼です。ここ数年の天然系古道具人気はそういった類の雑誌類から端を発していますが、そうした雑誌やフリーペーパーなどにも「骨董市は値切るのも楽しみのうち!」といった文言が書いてあるものも多いです。たしかにそれは本当のことですが、値切るのにも暗黙の了解、ルールというものが存在します。
客 「このAとBとCとDは、いくら?」
業者 「Aは2000円、Bは3500円、Cは1000円、Dは500円です」
客 「じゃあ、これ全部もらうから、このD(一番安価な商品)をひとつおまけしてくれない?」
これが、一番王道の値切り方です。数万円の商品一点だけを値切りたいという場合は正攻法で「これ、いくらか安くなりますか?」と聞く方法が妥当でしょうが、あまり商品単価の高くない商品を値切って購入したいと思っている場合は、ほかに欲しいものを見つくろって、複数個買うから値引きしてくれ、というのが妥当です。
骨董市などに出店する業者は、店舗とは違って、その日一日の売り上げを見積もって持ってきた商品の価格を振り分けることがほとんどです。たとえば「今日の荷物は全部で5万円で仕入れてきたから、今日1日で15万円くらい売り上げが上がればいいかな」という風に考えます。ですので、朝一番にもってきた壷がひとつ12万円で売れたとしたら、そのほかのものはさほど高く売らなくてもいいや、と思うわけです。
または、Aはやむを得ず5万円で仕入れてしまったがあまり高くは売れない商品なので6万円の値段をつける。それをお客が来て「1万円にしてくれ」といわれても無理なのです。信頼ある業者間では、その辺りは正直に話し、Aはこれでぎりぎりの値段だからまけられないけど、B?Eは利益が出ているのでまとめて買ってくれるなら半分の値段でいいよ」といった風にです。
そして、店舗の場合。個人的な見解ですが、お店でついている値段を値切るのはもっと失礼です。骨董市のように一期一会で買い物をするでなし、お店の看板を背負ってものを売っているわけですから、店主はそれぞれに自信をもって商品を買い付け、メンテナンスし店頭にならべて、商品の価格をつけているはずです。それを、はじめてお店に来た人が、「これってついてる値段より安くなるんですか?」といったようなことを言うのはお店の人の仕事に対する侮辱です。あえて値切らせるための高い価格設定を行っている店もあるでしょうが、例外的なものです。
また、そのお店にとっての上顧客(毎月かなりの金額を買い物してくれるお客様)の場合は、お礼的な意味を含めて値切り交渉が通用する場合も多くあるでしょう。そこまでの信頼関係を築くのには、ある程度の時間とお金がかかります。またそうした買い物慣れしたお客様というのはツボを心得ているので、毎回値切るようなことはしません。
欲しいと思ったものを安く買えた!というのは実際楽しいことです。ですが矢鱈な値下げ交渉は、相手に不信感を抱かれますし、骨董市などでは、お客とケンカ寸前にエキサイトしている業者や、あんたには売らない!と啖呵を切っている業者もたまに見かけます。くれぐれも、売っている相手への尊厳をもってお買い物にのぞんでほしいと思います。