ホンモノとニセモノ…

本日も商品のご紹介をつづけますが、今日の分にはホンモノの漆器とニセモノの漆器と両方あります。そこで先に漆器の分類についてご説明しておきます。漆器とひとくちにいいましても、中身と塗りの素材と組み合わせで表示が異なります。

「漆器」…素地の如何を問わず天然漆を塗った製品

「合成漆器」…天然漆以外の塗料を塗った製品



さらに詳しく言うと、


「木製漆器」…天然木に天然漆を塗ったもの。いわゆるホンモノの漆器。デパートなどでよく見る伝統的工芸品に指定されているものはすべてこれに該当します。

「樹脂製合成漆器」…木粉加工品(圧縮材)や合成樹脂の成型品(プラスチック)に各種の合成樹脂塗料を塗ったものはすべてこれに含まれます。



つまり、プラスチックの上に天然のうるしを塗ったものは、漆器と自称しても何の問題も無いことになります。また表記自体も全国で統一されているとは言い難く、ポリエステル塗料の「輪島塗箸」と記載されたものも市場に存在します。一般消費者は「木製漆器」のみを本物の「漆器」と考え、そのほかのものは「合成漆器」と捉えているのではないでしょうか?ただし、合成漆器だから悪いということではなく、高い技術で金蒔絵の施された合成漆器もありますから、予算と好みに合わせてみなさまに選んでもらいたいと思います。






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南天の絵柄の屠蘇器。未使用品なのでピカピカですがホンモノの漆器です。


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上記の2点の屠蘇器はどちらも合成漆器。左の朱色のものは、塗がカシューで素地はユリア樹脂。右の黒いものは、塗がカシューとウレタンで素地は天然木加工品(木粉とフェノール樹脂の成型品)です。朱のほうはカチャカチャといかにもプラスチックな音がしますが、黒いほうはなかなか良く出来ています。重さもくぐもった音も天然木に近いのです。
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松も幹が梨地、枝ぶりも堂々とよく描けています。先の南天柄の屠蘇器よりもホンモノっぽく見えます。








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本堅地の5つ重ね盃、台付。お見事、2000円。





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屋久杉の文箱。未使用品、各300円。屋久杉は、ほかの木に比べて油分が多いような気がします。なにも塗らずとも乾拭きだけで美しい木目が保てます。また、爽やかな香りが素晴らしいです。






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左は輪島塗の梅紋文箱。右は琳派風な水辺の菖蒲と鳥。共にホンモノの漆器で1000円。






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春慶塗をはじめ、琥珀色の奥に木目の透けて見える美しい木地呂塗り(きじろぬり)製品各種、100円から。左から、飛騨春慶の建水、丸盆3種、菓子鉢、菓子器。春慶塗とても安心できるとは限りません。素地が透けて見えるものですから、素地は確実に天然木ですが、塗装がまれにウレタン塗装のものがあります。





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鎌倉彫の丸盆4種と平鉢100円から。先に木地を彫ってしまう鎌倉彫や、木目を見せる春慶塗、竹で作る籃胎漆器などは通常下地を施しません。





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会津塗の鉄線丸盆。

非常に美しいものです。素地は天然木、塗はカシュー。絵は手描き本金蒔絵。分類上は合成漆器ですね。高い技術をもつ蒔絵師による会津塗独特の本金を使った消金粉、花芯には青貝を使うなどとても凝ったものです。なぜここまでするのなら漆を塗らないのか疑問です。未使用品、300円也。




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福岡の人にはなじみ深い、久留米の籃胎漆器(らんたいしっき)。♪らんたいしっきはきゅーうらん♪のCMソングは今でも流れているのでしょうか。竹製の素地を特徴とするものですが、現在でも竹を主流とするのは久留米だけのようです。

編みあげた竹かごに錆をつけて網目や隙間を埋め、黒漆の下塗り、朱漆、透漆の順に塗って研ぎだす。というのが本来の籃胎漆器の作り方です。ただ、おそらく30年ほど前が境目だと思いますがそれ以降のものはほとんどが合成塗料かカシュー。日常の生活用品が多いのでコストダウンのためでしょうか。残念なことです。ちなみにカシューは、カシューナッツからとれた油を原料とした漆に似た塗料です。割合耐久性があり強い光沢をもちますが、少し光沢は強過ぎるきらいがあり、耐久性も漆に比べると劣ります。





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合成漆器椀、いろいろ。100円から

素地が天然木加工品、メタアクリル樹脂、ユリア樹脂、メラミンなどなど。そして塗装はアミノアルキド、ウレタン、カシューなど。もういろいろです。漆器は扱いが面倒だ、という方はこちらを是非。ただし、「漆器はすぐに剥がれる」と思っている人はこれらの合成漆器のことです。素地が樹脂のものは下地を施してあるものはほとんどありませんのでちょっと堅い物にぶつけただけでも塗装がぺろりとはがれます。上に塗ってあるものがホンモノの漆であってもです。漆器の丈夫さは下地にあり。(写真左のように塗料なしの樹脂が露出した漆器風プラスチックはその心配がなく乱暴に扱っても一番上部なタイプです。)

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合成漆器の大きな蓋付椀もあります。





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合成漆器ならではの形状のものは、あえて楽しむことができますね。ひょうたん柄の仕切り皿。ちょっとしたおつまみも映えます。





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茶卓や小皿なども春慶塗や屋久杉などで多数。




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異彩を放つコースターは、将函塗。素地は珍しく紙です。柄もよく見ると、薔薇。斬新な試みだったのでしょうが、現在では見かけません。防水性は確かなので水で洗えます。





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溜塗(ためぬり)の楕円盆。飴色の高級感ある塗りものですが、素地は天然木加工品。高級感があるだけに惜しい。






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これは漆器ではありませんが、「亀甲菊底盛籠」。縁起ものですね。京都嵯峨野の野々宮竹を使った手編みのかごです。竹泉の銘入り。2000円也。






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京都は酢屋の蓋物。お椀などは木材をロクロで削って作る挽物(ひきもの)ですが、木の固まりをくり抜いて作るものを刳物(くりもの)と言います。手間のかかった工芸品です。600円也。






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ナスの漆絵の小箱。古いものは遊び心のあるデザインのものが見つかるので楽しいです。塗りも美しく上質なものです。




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大極上渋地製、銘々皿。1枚200円也。

これまで、上質なものには「本堅地」が施されていることは承知していただけたとおもいますが、もうひとつ下地の方法として「渋下地」というものがあります。これは、漆の代わりに柿渋、地の粉の代わりに炭粉を使うものです。本堅地よりも安価でできることから越前漆器をはじめ各地で使われました。ただ炭粉の粒子が表に響くことからざらつきを感じることもあり現在ではあまり使われなくなっています。輪島塗の本堅地に使われる珪藻土(けいそうど)はとても堅く、丁寧に扱えば100年もつほど丈夫ですが、ガラス質ですので床に落とすなどの衝撃には逆に弱くなります。その点も含め衝撃にも強く安価にできる渋下地は普段使いの器に最適ともいえます。



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山口県、大内塗の大内人形。おひなさまです。

ぽってり丸い漆塗りの雛人形です。可愛らしい容貌は、本漆塗りに蒔絵を施した漆芸人形です。作っているところもいくつかあり、これは創業文化元年、元祖製造元中村民芸社製です。








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宮崎漆器のお箸と箸置きのセット1組400円也。丸鉢は、日本ニュークラフトデザイン展入選の日向美術工芸社製、600円。









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しこく彫りの菓子器。朴訥な風情がよろし。





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玉手箱も100円。





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一段のみの箱。おせちも一段で十分という声も…算木(さんぎ)紋を金蒔絵であしらったすっきりしたデザインです。しっかりした作りの木製漆器。算木とは、13紀にそろばんが使われるようになるまでつかわれた計算をするための木の棒です。






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枡が三つ、コンパクトに収まります。




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漆器とは思えないモダンなデザインの小皿。中心が厚く縁が薄くなった木製漆器ならではの質感です。




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無地の2段重箱、1000円也。

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伊勢海老に青貝がちりばめられた2段重箱、200円也。

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朱に沈金の輪島塗1段箱。300円也。

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木製漆器の小ぶりな重箱各種、古いもの、少し傷みのあるものは200円から。






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合成漆器の重箱も各種100円から。スチロール樹脂、ABS樹脂などいかにもプラスチックな風情満点。ここまでプラスチックを楽しむデザインだと逆に好感が持てます。若い女性はメイクボックスとして使うんだとか…うーん、斬新。

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山中漆器の3段重箱。嘘くさい木目調に鉄線の金蒔絵。素地はメタアクリル樹脂、塗装はウレタン。200円也。


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伊勢海老の2段重箱。むくむくと盛り上がった伊勢海老の臨場感あふれます。






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