2012/02/10
本日ご紹介するのは「郷土玩具」に類するものです。
昨今では郷土玩具という呼び名で定着していますがこの用語は大正以降に使われるようになった意外と新しい言葉です。日本全国、その地方特産の玩具、といったようなものですが、土人形や独楽、こけし、土鈴、紙でできたものなど多岐にわたります。子どものための遊具、人形が根幹にあり、子どもの健やかな成長を祈るという共通の願いもこめられた信仰と結びついた神聖な意味合いを持つものも多数あります。現在では作り手がいなくなり廃絶してしまった玩具も多数ありますし、以前の土鈴まつりのときにも感じたことですが、幸いにも連綿と同じ形状のものが作り続けられている郷土玩具でも、古いものの方が技術的に上回っているものが多いです。技術を継承していくことが無理ならば、せめてできることは、古いものを捨てないこと、くらいです。これらの郷土玩具たちがどなたかの目にとまりこの先もずっとだれかの大事なモノとして存在してゆけますように…

まずは雛人形から。これは上品なたたずまいの土鈴。4センチほど。

こちらは木彫りでポッチり丸く雅な愛らしい置物。

庶民的な親しみやすさのある漆塗りの置物。
ひなまつり、昨今は全国的に旧家の立派な雛壇を見に行くというイベント化していますね。よそはよそ、うちはうち。小さなものでも自分の雛人形を飾りたいと思います。人形にまつわる設え、料理の支度、皆で寿ぎともに会食する直会(なおらい)、それぞれの家庭の身の丈に沿う、ひな祭りにまつわるすべての流れこそが子どもへ伝えるべきことだと思います。

1.5センチほどの木彫りの立雛。

3センチほどの一刀彫奈良人形の雛人形。
奈良人形の一刀彫の起源は900年近く前の保延2年(1136年)天下泰平五穀豊穣祈願の春日若宮社の御祭りにまでさかのぼるということです。奈良県の伝統産業です。これは先代の染川宗進氏の昭和28年の作品です。精緻に切り立った鑿跡と対比するように鮮やかで緻密な彩色、輝く金箔がとても美しい雛人形です。

同じく一刀彫の「猩猩(しょうじょう)」と「羽衣」。お能の演目です。ほんとに小さいのに、吸い込まれそうな迫力です。技術の粋。

飾るための雛人形ではなく、「流し雛」。鳥取の流し雛で有名ですね。
これは、ふた組の夫婦が桟俵(さんだわら)に乗っています。ちなみに桟俵は、米俵の両端にあてる丸いワラ製の蓋です。さんだらぼっちなどとも呼びますね。引っ掛けもついていますので、流さずに壁掛けとしても愛らしいものです。

こちらの流し雛は、赤紙に金の袴、烏帽子、青竹にはさんである10組の夫婦。同じく鳥取市の柳屋さんのもので先代の田中達之助さんの作品です。

夫婦和合の象徴として、ひな祭りには欠かせないハマグリ。金彩で美しい蝶々が描いてあります。ちょっとしたスペースに飾るだけでも春が味わえます。

こんがり健康的なお多福面。顔サイズで被れます。

オーソドックスな色白のお多福面。手のひらサイズ。

蓑笠(みのかさ)。絶対にプロが編んでる精緻な網目。観光土産の枠を出ています。

猫サイズ。
犬は安産、多産の象徴として子どもの成長を祈るのにも多用されるモチーフですので郷土玩具にもさまざま取り入れられています。

犬筥(いぬばこ)。紙張り子で中身は空洞です。子どもが生まれたときに健やかな成長を祈って1対で贈ります。雅な風習です。

笊被り犬(ざるかぶりいぬ)。よくある紙張り子の犬の置物がザルを被っているものです。古典的な江戸玩具ですね。子どもに寄りつく悪いものを払う、虫封じ的な意味などを理由にザルを被っているようです。犬に竹をかぶせると笑という文字に似るという洒落もいわれます。いずれにせよ縁起物。

ポップなカラーリングの犬土鈴。普通にカワイイです。

ハト、フクロウなどの土笛(つちぶえ)。土人形の中でも魅力的なジャンルの土笛。素朴な音と個体ごとの個性が光ります。

コアラのようでもある。

今回、個人的にイチ押しの土人形。宇宙人ですね、これは。正直、キテルなーと思います。

同じ作者のモノだと思われます。ドロドロの土人形。宇宙エネルギーを形にしたらこんなんだと思います。
追記:ブログをご覧になった方から、これは長崎の「トンチンカン人形」ではないかとの指摘をいただきました。貴重な情報をありがとうございます。ほとばしるエネルギーも納得の人形です。気になる人はググってみてね。

金属製の鈴。何ともいえず良い風合いです。

豆粒のような1センチ弱の十二支の置物。江戸玩具でしょうか。

豆々しく福々しい小さきモノたち。手びねりの土人形です。七福神に福助、招き猫など総勢40人の大所帯です。

見れば見るほど引き込まれる小ささ。

素直に、日本人はすごいな、と思う玩具です。からくり玩具の一種でしょうか。「餌食ネズミ」。

「豆犬」。打ち出の小槌と太鼓付。この小ささ、是非店頭で体感してください。